1999年の夏にシリコンバレーに遊びに行ったことがある。シリコンバレーにバイトに行っていた同級生から、ベッドルームがひとつ空いているから遊びに来ない?と誘われたのがきっかけだったと思う。
当時、シリコンバレーはまさにドットコムバブルまっただ中だったのだが、学生だった私はそんなこととはつゆ知らず、初めて来たシリコンバレー、アメリカに素朴なカルチャーショックを受けまくっていた。
まず驚いたのは、いろいろなものがでかいということで、スーパーに行くと、牛乳が 1ガロン(約3.8リットル)入りのボトルで売っているし、バケツのような入れ物に入った衣類用洗剤は重たすぎて持ち上げるのが大変だった。アイスクリームのコーナーに行くと、そこにもバケツのような容器が並んでいた。
次に驚いたのは、滞在先の近所で適当に一人で入って食べた中華料理がものすごくまずかったことで、アメリカは食べ物がまずいという噂は本当だったのか、と失望した。が、これは早とちりで、後日、地元の人が勧める店に行けばすごくおいしいものが食べれることがわかり、当たり外れが激しいんだなと、理解を改めた。
などなど、普通の感想を抱いて滞在を楽しんでいると、ある日、日本人が集まる、ちょっとした交流会のようなものに参加する機会があった。そこには、起業のためにシリコンバレーを視察にやってきたというエネルギーあふれる学生がいて、特に意味もなくシリコンバレーに遊びにきた私とはえらい違いだ、と感心した。
そして、自己紹介が終わると、彼はこんなようなことを言った。「すぐに会社を作りたいんだけど、ドメイン名は何がいいっすかねえ。なんとかドットコムみたいな、カッコいいやつで」私が、どんな会社なのかと聞くと、「それはまだ決めてないんすよ!」との答えが返ってきて仰天した。
やはり、あの頃はドットコムバブルなのであった。