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2004年12月 3日

研究と研究マネジメント

以前、情報系の教授全般について次のような疑問を感じていたことがある。昔はばりばりの研究者・ハッカーだったはずなのに、なぜ教授になる頃には自分で手を動かして研究しなくなるのだろうか。この疑問は、ときが経つにつれていつのまにか解消されていった。

先日、ある大学生と話していたときに、同じような疑問を感じていることがわかったので、自分の疑問が解消された理由を話した。ひとつの見方に過ぎないが、ここにまとめてみたい。

 

ここでは 2人の人物を設定する。30歳の研究者 A と 50 歳の研究者B がいる。2人は年功ベースで給与が決まる大学に所属している。そのため、年の開きに応じて、B は A の2倍の給料をもらっている。単純化のために大ざっぱに言えば、B は Aより 2倍の給料をもらっている以上、2倍の価値を出す必要がある。

もし 2人を純粋に研究者として評価するなら、B は A の 2倍の研究成果を出さなければならない。これは大変なことだ。分野によっても異なるが、B が持っている知識はどんどん古くなっていく上、若い A の方が新しい知識を吸収するのに有利である。現状維持をしているだけでは、B の能力は相対的に低下してしまう。A に負けないだけでも大変なことなのに、2倍の成果を出すのは並大抵のことではない。

さらに、もし Bが 2倍の研究成果を出せるとしても、教授という立場にあるならば、それだけではまったく足りない。研究室に 20人のメンバーがいるとしよう。もし教授が研究室のことを一切考えずに自分の研究だけに専念していたら、研究予算は欠乏して学生は学会出張もできず、指導も受けられない。それよりも 20人のメンバー全員で成果を出せる研究体制を作った方が全体として価値を多く出せる。

そのためには、研究予算の獲得や研究プロジェクトの運営といった仕事が不可欠である。このような仕事にはこれまでの経験や実績、人脈が多いに役立つ。 B が Aに対してアドバンテージを発揮できるのはこのような研究マネジメントと呼ばれる仕事である。

まとめると、教授という立場にもなれば、自分一人の研究よりも研究室全体、あるいは研究コミュニティ全体で成果を出すことに注力する方が重要になってくる。これが最初の疑問が解消されたひとつの理由である。

ある大学関係者から伺った話では、日本では研究マネジメントという概念があまり普及していないため、大きな研究プロジェクトのトップに実務能力に乏しい研究肌の教授を登用して失敗することがめずらしくないそうである。また、同様の理由により研究マネジメントを補佐する仕組みが大学に根付かないため、教授の負担はいっこうに減らないのだという。研究と研究マネジメントの両方をばりばりこなせる教授が理想だが、教授にかかる負担が減らない限り難しいようだ。

と、ここまで書いてITベンチャーの社長をしている知人に見てもらったところ、「教授と社長を入れ替えても通じますが、経営だと当たり前の話ですね」と指摘を受けた。言われてみれば、たしかに。

投稿者 satoru | このエントリーを含むはてなブックマーク