2005年9月27日
小説の5冊: カラマーゾフの兄弟、他
先日の便乗 5冊企画で、5冊を選ぶのがおもしろかったので、今度は小説で考えてみました。
新潮社 (1978/07)
売り上げランキング: 5,635
牢獄から出てきた後のドストエフスキーの作品はどれもいいのですが、中でもカラマーゾフの兄弟は突出しています。基本的に、どの作品でもひたすら病的な人たちがひたすら病的な人間関係の下でひたすら病的なことをしでかすのですが、この話では一家が一丸となって病的っぷりを発揮しています。その中で、一人だけアリョーシャだけがひたすらピュアな人物として登場しますが、結局、何も救われません。要するに、ひたすら病的でげっそりする小説です。
新潮社 (1972/03)
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物語がやたらと長く、やたらとたくさんの人物が登場する小説です。ドストエフスキーと違って病的な人たちは登場せず、主要な登場人物はむしろ平凡です。しかし、細部にわたる巧みな人物描写によって、読み進めるうちに実在の知り合いのような気がしてきます。物語は、戦争を通じて若者たちにいろいろなことが起きる、というものです。壮大なスケールの歴史小説としても読めますが、ただの青春小説としても読めます。トルストイは後期になると説教くさい作品が増えますが、「戦争と平和」にはそういった暑苦しい要素がないところもポイントです。
しがない生まれの男が猛烈な上昇志向の元に裕福な女性を騙し続けて頂点近くまで登りつめるものの、あっけなく失墜するという話です。主人公のやること考えることはひたすら打算的かつ馬鹿げていて、痛快です。それだけだと単におもしろいだけの小説ですが、虚栄心というテーマを追求しているところがポイントです。「しがない奴→異性利用→頂点→失墜」は文学の黄金パターンのひとつで、ナナでも同じ展開が見られます。こちらは娼婦が主人公でパリ中の貴族の殿方を堕落と破産のどん底に陥れるという話です。サッカレーの小説を題材にしたという、キューブリックのバリー リンドンも同じパターンを踏襲しています。最高の映画のひとつです。
筑摩書房 (1992/09)
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さしたる物語の起伏もない割には、10巻組とひたすら長ったらしく、その大半をうじうじした主人公の内面と、貴族の社交の描写が占めるという驚くべき小説です。紅茶にマドレーヌをひたしたら何やら霊感がひらめいた、というシーンだけで延々と何十ページも引っ張ります。主人公の恋人が監禁から脱走するというくだりや、同性愛者のシャルリュス男爵が辿る末路といった興味深いエピソードもありますが、基本はうじうじした心理描写です。徹底したうじうじ節と、そんな主人公の目を通して衰えゆく貴族の世界をうじうじ見るという、他に例を見ない小説です。
講談社 (1998/08)
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ポール・グラハムも大好きなオースティンの小説と同様、小さな街を舞台とした平和な小説です。物語は、類まれなる資質を持つ美しい女性が、その高貴な理想ゆえにとんでもない勘違いをしてどうしようもない老人と結婚してしまい、最終的には再婚して平凡な人生を送るというような話です。この作品で特別に興味深いのは、最初の結婚相手であるカソーボン氏の人物像です。その尋常でない学者的虚栄心と中身のなさからくる内面の干からびっぷりは圧巻です。ドラッカーは脚注的な些事の議論に終始している学者を批判しますが、カソーボン氏はまさに聖書への時代遅れの脚注付けという未完かつ不毛なライフワークに取り組んで生涯を終えました。それはそれとして、美しい主人公を鮮やかに描く筆致は素晴らしく、物語最後の言葉も印象に残ります。
まとめ
いわゆる名作の中から、タイプがあまり重ならない 5冊を選びました。 名作のいいところの一つはハズレがないことではないかと思います。



