2005年10月 9日
コンピュータ関連の読み物 5冊: ハッカーズ、他
先日の便乗 5冊企画をさらに引っ張って、今回はコンピュータ関連の読み物でおもしろかった 5冊を考えてみました。
工学社 (1987/02)
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本書は、1950年代から80年代までのハッカーの歴史を、当事者であるハッカーたちへの膨大なインタビューを元にしてまとめられた本です。50年代の鉄道模型ハッカーにはじまり、60年代 MIT ハッカー、70年代西海岸の自作コンピュータハッカー、80年代のゲームハッカーまで、本書で取り上げられるハッカー列伝は多岐にわたります。
著者自身はジャーナリストであり、ハッカーではありません。このため、ハッカーをヒーローとして扱いつつも、ハッカーの傲慢さや、浮世離れぶりについてはあくまでも冷静に捉えています。天才的なハッカーの武勇伝だけでなく、彼らの挫折や岐路についても描いているところが、本書をひと味深いものとしています。
アスキー (2002/05)
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こちらは打って変わって、ハッカーたち自身によって編纂された、ハッカー文化の集大成とでもいうべき辞典です。ハッカーのものの見方が如実に現れた内容となっており、ださいプログラムやださい一般ユーザに対するシニカルなユーモアがいたるところで現れています。巻末にはハッカー伝説やステレオタイプなハッカー像の解説といった読み物もあります。現代の感覚からすると内容がかなり古ぼけてきた感がありますが、ハッカー文化の歴史に興味がある人には楽しめると思います。
オーム社 (2005/01)
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ドットコムブームで成功したプログラマによって書かれたエッセイ集です。プログラマがちょうどもやもやと考えていたようなことを気持ちよく代弁してくれるエッセイが多く含まれています。著者は身も蓋もないようなことをずけずけと書くため、少なからず反発も買っているようですが、その大人げない書きっぷりが持ち味です。氏の言葉には癒し系の面もあり、ついつい自分への正当化に使ってしまいがちで危険です。
表題作の「ハッカーと画家」については以前に ポール・グラハム論法という記事で取り上げたことがあります。
白揚社 (1985/05)
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ゲーデル、エッシャー、バッハという 3者にみられる不思議な関連性を軸にしながら、数学や科学に関するさまざまな話題を取り上げ、最終的にはゲーデルの不完全性定理の証明を解説するという内容の本です。ひとつひとつの話題だけでもそれぞれ一冊の本になりそうなのに、それらをすべて放り込んで分厚い一冊にまとめたという非常に贅沢な本です。著者の博学ぶりもさることながら、難解な事柄を噛み砕く鮮やかな文章や、全編を通じて乱れない緻密な構成といった点でも最高の水準です。このような本を書ける人がいるというのは驚きでした。
新潮社 (2001/07/31)
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暗号の歴史と暗号の仕組みをセットで解説した本です。暗号が解読されて処刑された女王や、暗号に隠された埋蔵金を探し続けて一生を棒に振った人々、エニグマ暗号を解いた後のチューリングが受けた扱いなど、暗号にまつわる歴史には興味深いエピソードにあふれています。暗号の仕組みの解説では、暗号方法だけでなく、その解読方法についても掘り下げています。エニグマ暗号や量子暗号といった難解な暗号でも、本書の説明を読んでいるとわかったような気になります。優れた読み物の見本のような本です。
まとめ
5冊を選ぶにあたっては、実用的な要素が少なく、読み物として楽しめることを基準としました。結果として、タイトルにハッカーが含まれるものが 3冊も含まれてしまいました。もう少し違った本も読まねばと思った次第です。