2006年1月21日
Joel on Software
話題の『Joel on Software』を読みました。
本書では、ソフトウェア開発に関するさまざまな事柄について、著者の見解が述べられています。著者のものの見方は現実的で、語り口は率直です。理想を並べ立てたり、もったいぶったりすることなく、現実の問題に対する筆者のノウハウを、多くの例を挙げながら披露しています。
45のエッセイを通じて著者はたくさんの話題を扱っています。個人的には、プログラマの仕事のやり方、プログラマの採用方法、抽象化の漏れ、プログラミングに必要な知識のインフレ、といったあたりがとりわけおもしろいと思いました。中でも 27章では、プログラミングにおいて膨大なバッドノウハウの蓄積がいかに不可欠であるか仔細に述べられていて、ヒットです。
本書を特徴付けている要素のひとつに、著者独特のユーモアがあります。何でももったいぶらずに披露してくれる著者は、第8章の中で、自分の文章のユーモアの秘訣を明かしています。その秘訣とは
「可笑しくするための最も簡単な方法は、必要もないのに話を具体的にすることだ」(p.81)
というものです。この手法は本書の中で一貫して用いられており、.NETフレームワークの string 型がいかにありがたいかを紹介するところでは、
と、必要もないのに具体的な逸話が挿入されます。こんな話がいたるところに登場するのが本書の魅力のひとつです。「つい先日もATLコードを書いていて BSTR と OLECHAR と char* と LPSTR をいじくり回していたが、あれはなんという混乱だろう」 (p.352)
ややまとまりに欠ける、多少くどいところがある、エッセイの質にばらつきがある、といったところが気になりましたが、総じて、ソフトウェア開発に関する興味深い洞察に満ちたおもしろい読み物でした。ソフトウェアの開発者であれば誰でも楽しめる内容ではないかと思います。