2006年10月14日

自転車置場の議論

人が集まると、なぜかどうでもいいようなことほど議論が紛糾してしまう傾向がありますが、このような現象のことを、FreeBSD のコミュニティでは自転車置場の議論 (bikeshed discussion) と呼んでいることを知りました。

 

この、「瑣末なことほど議論が紛糾する現象」はパーキンソンの法則という本の「議題の一項目の審議に要する時間は、その項目についての支出の額に反比例する」という法則として知られています。

この本の中で著者は、原子炉の建設のような莫大な予算のかかる議題については誰も理解できないためにあっさり承認が通る一方で、市庁舎の自転車置場の屋根の費用や、果ては福祉委員会の会合の茶菓となると、誰もが口をはさみ始めて議論が延々と紛糾するというストーリーを紹介しています。

このように、「瑣末なことほど議論が紛糾する現象」はパーキンソン氏によって見事に説明されているのですが、「パーキンソンの法則」は一般に「役人の数は仕事の量とは無関係に増大する」という法則として知られているため、「瑣末なことほど議論が紛糾する現象」を指す言葉としては適切ではありません。

…というような話を知人にしたところ、 FreeBSD のコミュニティでは、このような現象は 自転車置場の議論 (bikeshed discussion) として呼ばれていると教えてもらいました。調べてみると、FreeBSD 開発者の間で行われた sleep コマンドの拡張に関する長大な議論の最後に、一人の開発者がパーキンソンの法則に登場する上記の話を引き合いに出して、「これは典型的な自転車置場の議論である」とまとめたのがこの言葉が定着した由来のようです。

プログラミングの世界では、インデントの数や括弧の前後の空白など、「自転車置場の議論」がごろごろと転がっています。そういったことについては FreeBSD のコミュニティに習って「自転車置場の議論」と呼んでほどほどにスルーするのがよさそうです。少し気取って「ああ、それはバイクシェッドだね」などと言うと、できる奴と思われるかもしれません (思われません)。

ところで、この記事ではパーキンソンの法則の邦訳に習って「自転車置場」という言葉を使いましたが、FreeBSD のサイトの FAQ の日本語訳では「バイク小屋」という言葉が使われています。バイク小屋の方が語呂がいい気がしますが、自転車置場の方が意味としていいような気がします。自転車置場なのか自転車置き場なのかという議論もあります。

それから、英語で表記するときはbikeshed なのか bike shed なのか、あるいは bike-shed なのか、変数名でいえば bikeshed なのか bike_shed なのか、あるいはbikeShed なのか、はたまた BikeShed なのか…。自転車置場の議論は果てしがありません。

ちなみに、www.bikeshed.org というサイトがありました。

パーキンソンの法則
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