2009年2月22日
マッキントッシュ物語 - 僕らを変えたコンピュータ
スティーブン・レヴィ氏の『マッキントッシュ物語 - 僕らを変えたコンピュータ』を読みました。
本書は、初代マッキントッシュ誕生とその後の数年の物語を関係者へのインタビューを元に再現したノンフィクションです。スティーブン・レヴィ氏の他の著作と同様に、インタビューは入念、ドラマ性たっぷり、ゴシップは多め、と期待通りの一冊でした。
物語にはスティーブ・ジョブズは当然として、ビル・アトキンソンやアンディ・ハーツフェルド、ジェフ・ラスキンなどの開発者も多数登場します。ジョブズは「現実ゆがみフィールド」を持ったカリスマとして頻繁に登場しますが、奮闘する開発者たちも負けず劣らず重要な役割を果たしています。
第一章は、著者とマックの出会いから始まります。1983年11月、ジャーナリストである著者はアップル本社を訪れ、発表前のマックのデモを目にします。即座に「目の前で改革が起こっている」ことを理解し、マックの記事を書くことを決意します。このときのスティーブ・ジョブズは意気揚々、まさに自信の塊です。
ジョブズとのインタビューが終わると、打って変わって 1945年に発表された風変わりなエッセイ「科学技術の今後の動向」(原題は As We May Think)の話題に移ります。バニーバー・ブッシュ氏によるこのエッセイの中には 1945 年に書かれたとは思えない、コンピュータの革新的な将来像が予言されています。
このエッセイは後に、ダグラス・エンゲルバート氏によるマウスとウィンドウの発明につながり、さらにこのビジョンはゼロックスPARCの研究者たちによって磨きがかけられます。これらの成果をベースとして誕生したのがアップルのリサ、そしてマッキントッシュです。2章から5章にかけて、マッキントッシュに至るまでのこういった過程を源流から丹念に辿っていきます
長い前置きが終わると、いよいよマッキントッシュの開発の物語に入ります。開発は最後の最後までめちゃめちゃ難航して、開発者の多くは完成後に燃え尽きてしまいます。
ともあれ、すったもんだの末にようやく1984年1月に発表。しかし、メモリが少なすぎるため事実上使い物にならず(フロッピーディスクを1枚コピーするのにディスクの交換が50回以上必要だった!)、さらにカーソルキーがないといった問題もあって予想よりぜんぜん売れず、絶望的なムードに落ちていきます。
結局、スティーブ・ジョブズはマック発表の翌年 1985年5月に追い出されるはめになります。その後もいろいろあって、マックは結局これからどうなるんだろう、という 93年の時点で本書は終わります。
まとめ
マックを使い始めたのは比較的最近ということもあって、マックの歴史への関心はあまりなかったのですが、本書は非常に楽しめました。序盤を読んでいるうちは、著者のマックへの思い入れが強すぎるんじゃないのと感じる部分もありましたが、途中からは自分もすっかり思い入れが強くなってきて、著者と一緒になってマック開発チームを応援するモードになっていました。絶版となっているのが残念な一冊です(熱い復刊要望文があります)。
ところで、同様の開発物語では Windows NT をテーマとした『闘うプログラマー』もかなりおもしろいです。残念ながら、『こちらも絶版になっているようです(こちらの中古は豊富にあるようですが)。次は『レボリューション・イン・ザ・バレー』を読んでみようと思います。
p.s.
最後の章で出てきた「自分のマックが調子悪いので調べたところ、オンロケーションという常駐ソフトが ワード 5.1に付属する『雇用報告書』というファイルと相性が悪いことが判明して、こいつを削除したら解決した」というどうでもいいようなエピソードがつぼに入りました。まさにBKです。
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