ソフトウェア特許について考える

最終更新日: 2004-03-02 (公開日: 2003-09-18)


このページは、ソフトウェア特許について考える上で役に立ちそう な情報をまとめていくことを目的としています。ご意見や情報など をぜひお聞かせください。

はじめに

特許庁のページ には、特許制度の説明として次のように書かれている。

特許法第1条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ること により、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的と する」とあります。発明や考案は、目に見えない思想、アイデアな ので、家や車のような有体物のように、目に見える形でだれかがそ れを占有し、支配できるというものではありません。したがって、 制度により適切に保護がなされなければ、発明者は、自分の発明を 他人に盗まれないように、秘密にしておこうとするでしょう。しか しそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することができないば かりでなく、他の人が同じものを発明しようとして無駄な研究、投 資をすることとなってしまいます。そこで、特許制度は、こういっ たことが起こらぬよう、発明者には一定期間、一定の条件のもとに 特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発 明を公開して利用を図ることにより新しい技術を人類共通の財産と していくことを定めて、これにより技術の進歩を促進し、産業の発 達に寄与しようというものです。

最後の一文によると、特許制度の狙いは「発明者には一定期間、一 定の条件のもとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を 図る一方、その発明を公開して利用を図ることにより新しい技術を 人類共通の財産としていくことを定めて、これにより技術の進歩を 促進し、産業の発展に寄与しようというもの」であることがわかる。

しかしながら、僕のこれまでの経験からすると、発明の公開と利用 による技術と産業の発展という本来の意図で特許を捉えている人よ りも、発明を真似されないように保護して金儲けをするためのもの、 と捉えている人の方が多いようである。

企業でソフトウェア開発に携わっている知人たちに聞いてみると、 特許データベースを検索するのは他社の特許に抵触していないか調 べるのが目的であり、「人類共通の財産」として特許の技術を利用 しようという考えは毛頭ないようだ。つまり、ソフトウェアの分野 では、特許は技術の宝庫としてではなく、地雷原として機能してい る、というのが実態に近いようである。

近年では、レッシグの『コモンズ』をはじめとする、知的財産権の過剰保護 はイノベーションを阻害する、という主張が影響力を持ち、ソフトウェ ア特許についても見直すべきであるという意見も増えてきたが、一方で、知的財産戦略大綱に見られるような「もっと保護しよう」とい う動きの方が強く推進されているようにみられる。 大学にTLO (Technology Licensing Organization) が設置され、 教職員および学生による特許取得が奨励される動きはすでに始まっている。

ソフトウェアは、既存の技術への積み重ねや組み合わせによって作 られる。ソフトウェア特許の権利主張がエスカレートし、多くの技 術が自由に使えなくなると、ソフトウェア開発に大きな障害をもた らす可能性がある。(TCP/IP や HTTP が利用にあたって特許のライ センス料が必要な技術であれば、このページは存在しえないないだ ろう)

こうした状況の中でソフトウェアの開発を続けていくにあたって、 一プログラマーとしても、ソフトウェア特許への理解を深めること が大切ではないかと考え、本ページを開設することにした。

参考文献

未読のもの

おわりに

ここ最近、ソフトウェア特許についてよく考えるようになった。以 前からソフトウェア特許の現在の在り方には問題があるのではない かとの認識は持ち続けてきたが、文章にして考えをまとめたことは なかった。

僕がソフトウェア特許の存在を初めて意識したのは、 GNU/Linux を使い始めて間もない 1996年頃に読んだ 『Think GNU』) という本を手にしたときだったと思う。「ソフトウェアの特許に反 対しよう」「なぜ特許はソフトウェアに有害なのか」といった章で は、ソフトウェア特許は特許の本来の目的に反して、技術と産業の 発展を阻害する効果をもたらすものであり、プログラマーから自由 を奪い、フリーソフトウェア活動の窒息を招く、と強く主張されて いた。

フリーソフトウェアに日頃から多大にお世話になっており、自分も フリーソフトウェアを開発していきたいと考えていた自分は、ずい ぶん感銘を受けた。以来、ソフトウェア特許の現在の在り方には問 題があるのではないかと考えて今にいたっている。

実は僕は長い間、この認識はプログラマーの共通のものであると勘 違いしていた。しかし、最近になって、どうもそうではないことが わかってきた。「特許でゲットリッチ」的な発想で大学でソフトウェ ア特許を書いたりする学生や、ソフトウェア特許について考えたこ となどないというプログラマーの方がごく一般的なのである。

考えてみれば、自分にしても『Think GNU』と出会っていなければ、 ソフトウェア特許について考えることはなかったかもしれない。そ こで、本ページは、自分の理解を深めることを目的とすると同時に、 大変僭越ではあるが、より多くの人がソフトウェア特許について考 えるきっかけになれば、という思いも込めて、書くことに決めた。


Satoru Takabayashi