2009年2月 2日
暗号化 - プライバシーを救った反乱者たち
先日、移動中に読む本を物色しているときに、たまたま目についた『暗号化 - プライバシーを救った反乱者たち』を持って出かけました。
この本は買ってから長らく放置していました。何の気なしに電車の中で手にとって見ると、「まえがき」の時点でこれがただならぬ本であることが伝わってきました。結局、電車、空港、機内とノンストップで読み続けて、あっという間に読み終えました。
暗号をテーマにした本といえば、サイモン・シンの『暗号解読』という本が有名です(以前に紹介しました)。2冊を比べると、暗号解読がサイエンスライターによって書かれているのに対し、本書はジャーナリストによって書かれているという違いが出ています。数字で感覚的に表すと次のような感じです。
暗号解読 = サイエンス : 歴史 : ドラマ = 4 : 4 : 2
暗号化 = サイエンス : 歴史 : ドラマ = 1 : 4 : 5
大雑把にいえば、『暗号解読』がサイエンス(暗号の仕組みと解読法)と歴史に重点を置いているのに対し、本書は歴史とドラマ、特に人間の泥臭いドラマに力を入れている点が異なります。
ホイットフィールド・ディフィー(Diffie-Hellman鍵交換の発明者の一人)の放浪生活、RSAデータセキュリティ社の初期の窮乏とその後の躍進、暗号アナーキストの会合、クリッパーチップをめぐる攻防、といった出来事が当事者たちのインタビューを元に生々しく再現されており、1970年代から1990年代にかける暗号の世界を一緒に駆け抜けているかのような臨場感があります。
下世話なエピソードがたくさん取り上げられているのもポイントで、『暗号解読』の高尚な雰囲気とは異なり、ゴシップ度が結構高いのも本書の特色です。
まとめ
『暗号解読』と比べるとやや影の薄い感がありますが、読み物としての完成度は高く、一読に値する本だと思います。最高に面白いノンフィクション本でした。
p.s.
ちなみに、スティーブン・レビー氏の『ハッカーズ』(こちらも以前に紹介しました)も、コンピュータ関連の読み物の中で最高峰にある一冊だと思います。今回の『暗号化』ですっかりスティーブン・レビー氏のファンになったので、未読だった『マッキントッシュ物語』『人工生命 - デジタル生物の創造者たち』『iPodは何を変えたのか?』をまとめ買いしました。楽しみです。
紀伊國屋書店
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